公開日:2023.04.04
(最終更新日:2024.03.11)
給与計算アウトソーシング・代行とは?メリット・デメリットや外注先の選び方を解説
給与計算は、その煩雑さや専門性の高さから担当者への負担が大きいうえ、少人数で対応することが多く属人化しやすい業務でもあります。
海外(アメリカ)では、70%以上の企業が給与計算アウトソーシングを利用しています。日本では10%しか普及していませんが、給与計算にかかる負担を解消するため、アウトソーシングを検討し始める企業は増加傾向です。
この記事ではアウトソーシングで依頼できる業務範囲や、代行会社へ依頼するメリット・デメリットを解説します。料金相場や代行会社を選ぶ際のポイントもあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。
1給与計算アウトソーシングとは?
給与計算アウトソーシングとは、毎月の給与計算や付随する労務管理などの業務を代行してくれるサービスのことです。煩雑で時間がかかる業務を外部へ委託することで、業務効率化や安定稼働が実現できます。
海外の企業はアウトソーシングの利用が一般的であり、特にアメリカでは給与計算に特化した専門会社の数が多くなっています。
日本ではあまりなじみがありませんが、2000年以降、給与計算アウトソーシングの市場が本格的に成長し始めました。国際的な競争力を求められる時代背景が追い風となり、市場が拡大しつつあります。
2給与計算アウトソーシングで依頼できる業務
アウトソース可能な業務の範囲は代行会社によって異なりますが、代表的なものは以下の6つです。
依頼できる業務の例
給与計算 | 毎月の勤怠データに基づく給与支給額の計算 |
賞与計算 | 各企業の規程に基づいた賞与支給額の計算 |
労務管理 | 社員の入退社や部署移動、扶養人数変更といった付随業務の対応 |
社会保険事務の手続き※ | 労働保険料の更新や健康・厚生年金の定時決定/随時改定など |
給与明細書作成 | 毎月の給与や年に数回の賞与支給に合わせて作成・発送 |
従業員からの問い合わせ対応 | 各種問い合わせの対応(実施している代行会社は限られる) |
※社会保険手続き業務は社労士の独占業務です
上記はすべてが一つのパッケージになっているわけではなく、希望に応じてサービスをカスタマイズする仕組みになっている場合がほとんどです。
3給与計算アウトソーシングを依頼するメリット
給与計算アウトソーシングを依頼するメリットは、以下の5つです。
コスト削減が期待できる
給与計算アウトソーシングを依頼するメリットは、下表に挙げる金銭的・人的コスト削減が期待できる点にあります。
給与計算で発生するコスト | 概要 |
---|---|
システムにかかるコスト |
|
給与計算担当者にかかるコスト |
|
代行会社には、さまざまな企業の給与計算プロセスを見直した経験により豊富なノウハウがあるため、状況に合わせて最適な提案を受けられます。例えば、業務プロセスのシステム化や関連書類の電子化によって、合理的な運用基盤を築くことが可能です。
ただ、コスト削減につながるかはケースごとに異なります。場合によってはコストを削減できない恐れもあるため、依頼時に確認するのが確実です。
コア業務に集中できる
給与計算アウトソーシングのメリットは、コア業務に集中できる点にもあります。給与計算業務の人員確保が不要、あるいは従来よりも少ない人数で対応が可能となるためです。
採用面においても「給与計算業務の経験者」を求める必要がなくなり、代わりにコア業務に特化した人材を増員するチャンスも得られます。採用業務や社内教育などのコア業務へ転換することで、事業成長を加速させる効果が期待できます。
法改正へ迅速に対応できる
給与計算代行会社に依頼すると、年1回行われる社会保険料や雇用保険の料率改訂にも迅速に対応できます。法令改正の情報も正確に把握している人事給与の専門家が、業務を代行してくれるためです。
例えば、法改正が行われると時間外手当の割増率が変更になる場合もありますが、専門家が対応することで「全従業員の給与を誤って支給する」という事態を避けられます。常に法改正の情報を正しく収集・理解することに不安がある場合は、専門家に任せるのも一つの方法です。
季節的業務の人員確保が不要になる
給与計算アウトソーシングによって、企業側の年末調整や賞与計算といった季節的業務においても業務が不要になるメリットがあります。通常より多くの人員が必要な季節的業務で、即戦力となる人員を確保できるためです。
年末調整や賞与計算には専門的な知識が必要であり、臨時でスタッフを雇うにも慎重な対応が求められます。その点、給与計算代行会社の担当者は、年末調整や賞与計算を含む給与計算全般に豊富な知見を持っています。
季節的業務の処理で残業やミスが多い場合も、給与計算アウトソーシングを利用すると業務効率化や従業員満足度の向上につながるでしょう。
属人化のリスクを避けられる
給与計算アウトソーシングのメリットは、属人化のリスクを回避できる点にもあります。担当者の休職や退職に左右されることもなく、安定的に給与計算業務を行えるためです。
給与計算業務は人件費を抑えるために、人事や経理などの間接部門が少人数で担当している企業が多数です。その分、給与計算業務の担当者がどうしても限られてしまい、休職したり退職したりすると誰も給与計算を行えなくなるリスクを抱えています。
コントロールが難しい従業員の休職・退職に備え、給与計算を安定稼働させたい場合にもアウトソーシングは有効といえるでしょう。
4給与計算アウトソーシングを依頼するデメリット
給与計算アウトソーシングの依頼は有効な反面、以下のデメリットもあります。
システム設計と運用で追加コストがかかる
給与計算アウトソーシングのデメリットは、追加コストがかかる点にもあります。給与計算アウトソーシングを利用するにあたって、企業に合わせたシステム設計と運用が必要なためです。給与制度が変更になった場合もその都度システム設計と運用も変えることとなり、追加コストが発生します。
ただし、給与計算アウトソーシングに必要な費用は企業によって異なりますが、社員50人程度の会社で1ヶ月4万円~6万円程度(給与計算代行のみの場合)が相場です。業務の負担軽減や効率化を踏まえると、費用対効果は高いといえるでしょう。
情報漏えいのリスクがある
給与計算アウトソーシングでは、従業員の個人情報や給与データなどの情報が漏えいするリスクがあります。専門家による作業であればリスクは低いですが、人が行う作業のため確率はゼロとは言えません。
特に、契約社員やアルバイトが一部の実作業を担当している代行会社では、情報の取り扱いに関する教育が行き届かず、漏えいのリスクが高まる可能性があります。給与計算アウトソーシングの依頼先は、情報管理についても確認したうえで慎重に検討しましょう。
コミュニケーションコストがかかる
アウトソーシングでは給与計算業務にかかっていた負担を軽減できる反面、代行会社とのコミュニケーションコストがかかるデメリットもあります。業務を委託するうえで、ルールやデータの共有・確認が必要になるためです。
特に末締め翌10日払いのように、締め日から給与支給までの期間が短い会社の場合は、コミュニケーションコストがかかることで、支給日に間に合わなくなるリスクもあります。
大型連休を挟み稼働日数が少ない場合は、より上記のリスクが高まります。給与計算代行会社に依頼するとしても、リードタイムによっては一時的に確認作業などで忙しくなる旨を理解しておきましょう。
5給与計算アウトソーシングの料金相場
給与計算のアウトソーシングを検討する際には、費用感も重要な判断材料です。給与計算アウトソーシングの費用は、主に以下の要素で金額が変わってきます。
- 従業員数
- 会社独自の賃金制度の有無
- 委託する業務の範囲 など
一概に料金が決まっているわけではありませんが、従業員1人当たり1,000円前後といった設定が多数です。
例えば、従業員数が50人の場合、ひと月当たりの料金相場は4万円~6万円程度です。年末調整や住民税更新業務も含めると、10万円〜20万円程度かかります。ただし、勤怠管理や社会保険関連業務も依頼すると、さらに月額料金が高くなる場合があります。
給与計算アウトソーシングの料金相場について詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてください。
給与計算アウトソーシング・代行の料金はどれくらいかかる?報酬体系や外注先ごとの相場を解説
給与計算アウトソーシングにおける料金相場や料金比較のほか、代行会社の選び方について解説します。
6給与計算アウトソーシングを依頼する会社の選び方
ここでは給与計算アウトソーシングを依頼する会社の選び方について、7つの観点から解説します。
- 依頼可能な業務範囲で選ぶ
- コストパフォーマンスで選ぶ
- 過去の実績を比較して選ぶ
- セキュリティ体制が構築されているところを選ぶ
- カスタマイズ性が高いところを選ぶ
- 委託希望人数に適しているところを選ぶ
- Web申請に対応しているところを選ぶ
なお、企業規模によって抱える課題が若干異なるため、選び方のポイントも変わります。企業規模別の選び方について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください。
給与計算アウトソーシングを導入するべき中小企業とは?内製化との違いやメリットを解説
給与計算アウトソーシングを中小企業が導入するメリットや注意点を解説するとともに、給与計算の内製化とアウトソーシングを比較するポイントも紹介します。
依頼可能な業務範囲で選ぶ
給与計算の代行会社を選定する際は、依頼できる業務範囲に注目しましょう。どこまで依頼できるかによって、月々の料金や自社の業務効率が変わるためです。
例えば、年次業務や関連業務も含めてアウトソースするとします。この場合、手続きの漏れやミスのリスクが軽減し、担当者の負担を大幅削減が期待できる一方で、月次業務だけ依頼するよりも依頼料金が多くかかります。
アウトソーシングを利用する際は依頼したい業務範囲をはっきりさせたうえで、代行会社を探していきましょう。
コストパフォーマンスで選ぶ
給与計算アウトソーシングは、コストパフォーマンスも考慮して選びましょう。給与計算業務の効率化・負担軽減効果に対して金銭的コストが大きいようでは、給与計算アウトソーシングの利点が薄れてしまいます。
現在かかっている金銭的・人的コストを削減でき、コア業務に集中することで得られる利益が多いなら、コストパフォーマンスが高いといえます。コストパフォーマンスを正確に比較するためにも、まずは人件費を含め現在の給与計算に費やしているコストを把握することが大切です。
過去の実績を比較して選ぶ
給与計算アウトソーシングの依頼先は、実績が豊富な代行会社を選びましょう。実績が多い会社ほどノウハウも蓄積されており、業務効率化の再現性が高いと推測されるためです。過去の実績を比較する際は、以下の4つをチェックしてみてください。
- 受注実績
- 運営年数
- 導入事例
- サポート体制
候補となる各代行会社のWebサイトなどを確認し、安定して給与計算アウトソーシングを任せられるような依頼先を見極めましょう。
セキュリティ体制が構築されているところを選ぶ
代行会社のセキュリティ体制も、選定時の重要なポイントです。給与計算業務では、従業員の個人情報や給与情報などを取り扱うためです。セキュリティ体制が不十分な代行会社に依頼してしまうと情報漏えいにつながり、従業員や外部からの信頼が著しく低下します。
セキュリティ体制の判断基準は、下表に挙げる認定・認証の有無です。
セキュリティ体制の判断基準
プライバシーマーク | 個人情報の適切な取り扱いを認定する |
---|---|
ISMS認証 | 情報管理システムのセキュリティ基準を満たすことを証明する |
情報漏えいを防ぐためにも、上記2つの認定・認証を受けている代行会社に依頼しましょう。
カスタマイズ性が高いところを選ぶ
給与計算アウトソーシングの依頼先を選ぶ際は、代行会社のカスタマイズ性にも注目しましょう。カスタマイズ性が高いほど、給与計算担当者の負担軽減や業務の品質向上がより期待できるためです。
例えば、代行会社によっては特殊な手当や給与計算ルールにも柔軟に対応できたり、従業員対応のオプションが充実していたりします。カスタマイズ性が高い代行会社を選ぶことで、自社に最適化されたアウトソーシング体制を構築でき、業務効率化がより進むでしょう。
委託希望人数に適しているかで選ぶ
委託希望人数に適しているかどうかも、給与計算アウトソーシングの依頼先を決めるポイントです。給与計算代行会社は、対応可能な従業員数を下記のように定めている場合があるためです。
- 50名未満
- 500名未満
- 1,000名以上 など
対応可能人数と委託人数に差があると必要以上の費用がかかったり、そもそも依頼できなかったりします。対応できる企業規模によって、有するシステムが異なるケースも少なくありません。最適なアウトソーシング体制を構築するためにも、代行会社の対応可能人数はあらかじめ確認しましょう。
Webでの申請に対応しているところを選ぶ
従業員から申請される各種手続きの量が多い場合は、Web申請に対応している会社に依頼するのがおすすめです。Webからの入力だけで申請・変更手続きが行えてスムーズなため、業務全体を効率化できます。
逆にWebを使わない場合、代行会社に情報が届くまでの間に担当部署を挟むこととなり、やり取りに時間がかかってしまいます。従業員数が多く大量の申請が必要な場合は、Web申請に対応した代行会社を選ぶと良いでしょう。
給与計算代行を依頼するなら給与計算アウトソーシングのサラジー(Salazy)で
給与計算代行会社に依頼することで、以下の業務を効率化できます。
- 給与計算
- 賞与計算
- 労務管理
- 社会保険事務手続き
- 給与明細書作成
- 従業員からの問い合わせ対応
給与計算業務の属人化リスクや業務負担といった課題の解消には、給与計算代行会社への依頼が有効です。当記事で紹介したポイントを参考に、自社に最適な代行会社を選び依頼しましょう。
なお、給与計算アウトソーシングをお探しなら「Salazy(サラジー)」がおすすめです。給与計算プロセスを賃金規定や就業規則から見直し効率化できるほか、給与計算業務にかかるコストを約30%削減できます。
給与計算アウトソーシングの利用を検討している方は、ぜひ気軽にお問い合わせください。
このコラムは、弊社が提携する社会保険労務士の監修を受けています
株式会社小林労務 代表取締役社長
社会保険労務士法人 小林労務 副代表
特定社会保険労務士 / キャリアコンサルタント / ハラスメント防止コンサルタント 上村 美由紀 先生
2006年 社会保険労務士登録
2014年 代表取締役社長就任
電子申請を取り入れることにより、業務効率化・残業時間削減を実現。
2016年に、東京ワークライフバランス認定企業の長時間労働削減取組部門に認定される。
社労士ベンダーとして、電子申請を推進していくことを使命としている。