公開日:2023.05.10
(最終更新日:2024.03.11)
給与計算アウトソーシング・代行の料金はどれくらいかかる?報酬体系や外注先ごとの相場を解説
各企業が経営資源をより効率的に活用するために、給与計算アウトソーシングの需要が高まっています。
国内のアウトソーシング市場が拡大するなか、料金相場について調べている方も多いでしょう。しかし、給与計算アウトソーシングは、勤怠管理や社会保険事務の対応などを委託するか否かによっても料金が変わります。
本記事では、給与計算アウトソーシングにおける料金相場や料金比較のほか、代行会社の選び方について解説します。給与計算のアウトソーシングを検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
1給与計算アウトソーシングの料金内訳
給与計算アウトソーシングの料金は、以下の要素に分かれています。
初期(導入)費用
給与計算アウトソーシングを導入する際には、初期費用が必要な場合があります。内訳の例は、下表の通りです。
初期費用の内訳
項目 | 概要 |
---|---|
システム構築費用 | 各企業独自の給与計算に合わせたシステムの構築が必要 例)社員情報や勤怠情報のマスター作成、カスタマイズなど |
データ移行費用 | 社内の給与計算システムから、アウトソーシング先のシステムへデータ移行が必要 例)従業員の給与データや勤怠データなどの移行 |
プロセスのコンサルティング費用 | 代行会社提供のコンサルティングサービスを利用する場合 例)業務フローの見直しや給与計算ルールの整理、仕様書作成などに関する対応 |
各代行会社によって金額や内容が異なるため、事前に確認しておきましょう。
基本料金
給与計算アウトソーシングの基本料金には、下記のような項目が含まれます。
基本料金の内訳
項目 | 概要 |
---|---|
給与計算システムの利用料 | 給与計算に必要なシステムや機能を利用するための費用 |
給与計算の処理料 | 代行会社の人件費などを含む実務に関する基本費用 |
サポート料など | 法令改正に伴う給与計算システムの設定変更や、問い合わせ対応などのサポート費用 |
上記を踏まえた基本料金は、各代行会社のサービス内容や品質によって異なります。自社の要件に適した料金体系を選ぶために、複数の代行会社と比較検討することがおすすめです。
従業員1人当たりの月額費用
給与計算アウトソーシングの料金は、企業の従業員数に応じて変わります。料金体系は多くの場合「基本月額料金+1人当たりの月額料金」という形で設定されており、委託する人数によってトータルの費用が変動するのです。
委託する人数が増えると総額は上がりますが、1人当たりの単価は下がる場合もあります。従業員数が増えることで、スケールメリットが生じることが要因です。
なお、従業員1人当たりの月額費用は、1,000円前後が相場となります。給与計算アウトソーシングを検討する際には、複数の代行会社を比較し、自社の従業員数に適したサービスを見つけることが大切です。
業務によって発生する費用
給与計算アウトソーシングでは、業務の複雑さによって料金が変動することがあります。
多くの場合、給与計算システムによる自動計算が可能ですが、特殊な手当や給与計算ルールなどで標準化が難しい場合は手作業が必要となります。業務の手間が増えた結果、追加料金が発生する場合があるのです。
追加料金を減らすには、事前に自社の給与計算業務のプロセスを代行会社と共有するのが有効です。また、複数の代行会社に相談して、それぞれの業務の複雑さへの対応力や料金体系を比較検討することで最適なサービスを選べるでしょう。
オプション
追加するオプションによっても、給与計算アウトソーシングの料金が変動します。具体的には、以下のようなオプションに追加で代行料金が発生します。
- 給与明細の発行
- 給与支払いの手続き
- 年末調整への対応
- 賞与の計算
- 住民税の更新
オプションは、代行会社によって対応できる範囲が異なります、また、各オプションの料金も委託人数や業務の煩雑さ(要件)によって変わるため、事前に確認しましょう。
給与計算代行会社
給与計算代行会社の依頼料金は、50人規模の会社において月額4万円~6万円程度が相場です。給与計算アウトソーシングの料金は「基本月額料金+1人当たりの月額料金」で決まるため、月額基本料が別途かかる可能性もあります。
代行会社は業務を標準化しやすく負担が軽減されるため、比較的安価な料金で提供されるケースが少なくありません。
ただし、年末調整や住民税更新業務も依頼する場合には、処理が行われる期間の料金が通常の月よりも高くなります。目安として、50人規模の会社でおおよそ10万円~20万円程度です。勤怠管理や社会保険関連業務も依頼すると、月額料金がさらに高くなる場合があります。
とはいえ、給与計算代行会社はアウトソーシングの依頼を多数受けており、業務プロセスの最適化に関するノウハウも多く持っています。給与計算にかかる人的・物的コストも含め、トータルコストを削減できる可能性を考えると、費用対効果は大きいといえるでしょう。
社労士事務所
社労士事務所に依頼した場合の費用は、社労士事務所によって異なりますが、おおよその目安は下表の通りです。
社労士事務所の費用相場
従業員数 | 月額費用 |
---|---|
1~10人 | 10,000〜25,000円 |
11~30人 | 25,000〜35,000円 |
31~50人 | 35,000〜55,000円 |
51人以上 | 要相談 |
上記の金額は、社労士事務所との顧問契約を前提としています。顧問契約の有無によっては、価格が変動する恐れもあるため注意が必要です。
社労士事務所は社会保険や労働保険などを専門にしているため、保険関係の業務についてサポートを受けたい場合に利用すると良いでしょう。
税理士事務所
税理士事務所に依頼した場合の料金は「基本料金+単価×従業員数」で決まります。基本料金と人数単価を合わせた相場価格は、下表の通りです。
社労士事務所の費用相場
従業員数 | 月額費用 | 年間費用 |
---|---|---|
10人以下 | 10,000~20,000円 | 120,000〜240,000円 |
11~30人 | 20,000~35,000円 | 180,000〜360,000円 |
31~50人 | 35,000~55,000円 | 360,000〜600,000円 |
51人以上 | 55,000円~ | 600,000円〜 |
基本料金は10,000円程度、人数単価は500円〜1,000円程度が相場です。上記費用に加え、初期設定費用が1人あたり1,000円~2,000円程度かかる場合もあります。
社労士事務所と同様に、税理士事務所も顧問契約によって価格が変動するかもしれません。税理士事務所によって変動要因は異なるため、具体的な金額は直接確認してみてください。
税理士事務所は税務に関する業務を専門としているため、税制改定に伴う給与計算の変更など臨機応変な対応が必要なときも頼りになるでしょう。
100名規模
給与計算 | 850円/人×100名(8万5,000円) |
---|---|
月額基本料 | 8万円 |
合計 | 16万5,000円程度 |
300名規模
給与計算 | 800円/人×300名(24万円) |
---|---|
月額基本料 | 7万円 |
合計 | 31万円程度 |
500名規模
給与計算 | 700/人×500名(35万円) |
---|---|
月額基本料 | 14万円 |
合計 | 49万円程度 |
1000名規模
給与計算 | 700/人×1000名(70万円) |
---|---|
月額基本料 | 16万円 |
合計 | 86万円程度 |
4給与計算アウトソーシングの依頼料金を安くするコツ
給与計算アウトソーシングの依頼料金を安くするには、以下5つのコツを押さえることが大切です。
なお、給与計算アウトソーシング導入初年度は、さまざまな費用がかかります。そのため、給与計算アウトソーシングの費用対効果は、3年以上の長期的な視点で見ることが重要なことも理解しておきましょう。
アウトソーシング会社の給与計算システムを使う
アウトソーシング会社の給与計算システムを使うことで、依頼費用を抑えられます。自社で使っている給与計算のシステムを解約でき、費用を浮かせられるためです。
アウトソーシング会社が給与計算システムの親アカウントを持っているなら、顧客に割り当てる子アカウントを無料で増やせる場合があります。ただし、アカウント料の内訳は見積もりからは分からないケースがあるうえ、代行会社によっては子アカウント作成費用を開示していない会社もあります。
アウトソーシング会社の給与計算システムを使うかどうかは、アカウント料の内訳を直接確認したうえで判断しましょう。
自社の事業規模に合ったアウトソーシング会社を選ぶ
給与計算を依頼する代行会社は、自社の事業規模に合わせて選ぶことを推奨します。事業規模と合わない代行会社に依頼すると、料金が高くなったり依頼できる範囲が少なくなったりするためです。
中小企業が大手を対象としたアウトソーシング会社に依頼すると、基本料金が高いケースが多々あります。逆に大手が中小企業をメインとするアウトソーシング会社に依頼した場合、依頼できる範囲が少なく、大量処理が追いつかない状況になりかねません。
結果的に、アウトソースを依頼したにもかかわらず作業時間を短縮できないばかりか、逆に忙しくなる恐れも出てきます。
業務の効率化と費用対効果の向上、双方を実現するためにもアウトソーシング会社は自社の規模に合わせて選びましょう。
必要な業務だけアウトソースする
代行会社の依頼料金は、事前に社内で要件定義を十分に行い、必要な業務だけアウトソースすることでも安くできます。アウトソースする業務が減ることで、依頼で発生するコストを抑えられるためです。
必要な業務だけを依頼することで、アウトソースが必要な業務を代行会社が把握するためのヒアリング工程も短縮できます。アウトソースをスタートする具体的な時期のように、アウトソーシングに関する情報をできるだけまとめておくことも重要です。
不要なミーティングや打ち合わせといったコミュケーションコストの削減にもつながり、依頼料金をさらに抑えられるでしょう。
依頼する業務の工数を減らす
必要な業務だけアウトソースするのに加え、依頼する業務の工数を減らすのも一つの方法です。各業務で発生するコストが減るため、依頼料金を安くできます。
仮に問い合わせ対応もアウトソースする場合、対応の数に応じて依頼料金がかかる場合があります。しかし、以下のような方法で問い合わせ数を減らせれば、依頼料金を抑えることも可能です。
- よくある質問に対してFAQを作成する
- チャットボットを設置して簡単な質問を自動で処理する
依頼料金を出来る限り安くしたい場合は問い合わせ対応以外の業務でも、工数を減らせるところはないか、業務プロセス全体を再チェックすると良いでしょう。
電子化の体制を整える
給与計算に関わる業務全般の電子化も、依頼料金の削減につながります。電子化することで工数が削減され、さまざまなコストを抑えられるためです。例えば、従来紙で受け渡ししていた給与明細を電子化すると、以下のコストを削減できます。
- 印刷する紙やインクにかかる金銭的コスト
- 印刷や封入にかかる時間的コスト
- 準備対応する担当者の人的コスト
給与計算以外に年末調整もWeb申告にすると、業務の大幅な効率化が可能です。なお、電子化を進める際は、「電子帳簿保存法」の要件に従う必要があります。電子帳簿保存法について詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてください。
電子帳簿保存法改正による影響をわかりやすく説明!
電子帳簿保存法改正による影響をわかりやすく説明します。電子帳簿保存法は、国税関係の書類を電子データでの保存を政府が許可し、業務軽減を可能にする法律です。
5給与計算アウトソーシングで依頼できる業務
給与計算アウトソーシングで依頼できる業務の例は、下表の通りです。
依頼できる業務の例
給与計算 | 毎月の勤怠データに基づく給与支給額の計算 |
---|---|
賞与計算 | 各企業の規程に基づいた賞与支給額の計算 |
労務管理 | 社員の入退社や部署移動、扶養人数変更といった付随業務の対応 |
社会保険事務の手続き※ | 労働保険料の更新や健康・厚生年金の定時決定/随時改定など |
給与明細書作成 | 毎月の給与や年に数回の賞与支給に合わせて作成・発送 |
従業員からの問い合わせ対応 | 各種問い合わせの対応(実施している代行会社は限られる) |
※提携社労士事務所にて対応
特に、トータルアウトソーシング会社では幅広い業務を依頼できます。
6給与アウトソーシングのメリット・デメリット
給与計算アウトソーシングのメリット・デメリットは、下表の通りです。
メリット | デメリット |
---|---|
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給与計算アウトソーシングにはさまざまな効果がありますが、デメリットも理解したうえで依頼することが重要です。なお、企業規模によっても依頼のメリット・デメリットは異なるため、詳しく知りたい方は下記の記事もぜひ参考にしてください。
給与計算アウトソーシングを導入するべき中小企業とは?内製化との違いやメリットを解説
給与計算アウトソーシングを中小企業が導入するメリットや注意点を解説するとともに、給与計算の内製化とアウトソーシングを比較するポイントも紹介します。
7給与アウトソーシング・代行会社を選ぶポイント
給与計算アウトソーシングの代行会社は、以下のポイントに沿って選びましょう。
注目ポイント | 注目すべき理由 |
---|---|
依頼可能な業務範囲 | 依頼範囲によって月々の料金や業務効率が変わるため |
コストパフォーマンス | 費用が高くでも、給与計算業務の効率化・負担軽減につながらなくては意味がないため |
実績数 | 実績が豊富なほど、業務効率化の再現性が高いため |
セキュリティ体制の盤石さ | 情報漏洩を防ぐため |
カスタマイズ性 | 給与計算担当者の負担軽減や業務の品質向上がより期待できるため |
委託希望人数と対応可能人数 | 差が大きいと、必要以上に料金がかかる恐れがあるため |
Web申請の可否 | 手続きがスムーズになり、業務効率化につながるため |
いずれにおいても複数社の資料や見積もりを取得し、慎重に比較検討することが大切です。各ポイントについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください。
給与計算アウトソーシング・代行とは?メリット・デメリットや外注先の選び方を解説
給与計算アウトソーシングで依頼できる業務範囲や、代行会社へ依頼するメリット・デメリットを解説します。
8給与計算アウトソーシングを導入する流れ
給与計算アウトソーシングは導入後にテスト稼働・並行稼働を行い、問題がなければ本稼働となります。本稼働が始まるまでは、以下の準備が必要です。
準備の流れ | 概要 |
---|---|
課題や導入目的の明確化 | 自社の課題や目的を明確化することで、業務効率化を目指す |
アウトソーシング会社を選定 | 業務範囲や従業員数の制限など、サービス内容を比較して選定する |
見積書や提案を 検討した上で契約 |
認識の誤りから契約後にトラブルになることを防ぐ |
現状の業務分析 | 給与計算アウトソーシング会社による業務分析を経て、アウトソースすべき業務を抽出する |
要件定義をもとに業務設計 | 業務分析と自社の要望をもとに具体的な業務設計を作成する |
給与計算システムの導入準備 | システム設計に従い、導入準備を進める |
給与計算システムの運用テスト | 社内処理と並行で稼働しつつ、必要に応じてシステムを改善する |
サービス開始 | 給与計算アウトソーシングの運用を開始する |
本稼働までは約3ヶ月〜4ヶ月かかるため、余裕を持ったスケジューリングで導入を進めましょう。
9まとめ
給与計算アウトソーシングの料金は依頼先や自社の事業規模によっても変わるため、慎重に選定することが大切です。依頼料金をなるべく安くしたい方は、既存の業務プロセスを見直しながら依頼範囲を調整していきましょう。
なお、給与計算のアウトソーシングをお探しなら、給与計算関連の効率化・コスト削減・安定運用を実現できる「Salazy(サラジー)」がおすすめです。無料で業務のひっ迫度診断も実施しているため、気になる方は気軽にお問い合わせください。
このコラムは、弊社が提携する社会保険労務士の監修を受けています
株式会社小林労務 代表取締役社長
社会保険労務士法人 小林労務 副代表
特定社会保険労務士 / キャリアコンサルタント / ハラスメント防止コンサルタント 上村 美由紀 先生
2006年 社会保険労務士登録
2014年 代表取締役社長就任
電子申請を取り入れることにより、業務効率化・残業時間削減を実現。
2016年に、東京ワークライフバランス認定企業の長時間労働削減取組部門に認定される。
社労士ベンダーとして、電子申請を推進していくことを使命としている。