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データ化業務/ スキャニング/ 2023.09.08 2024.04.16

領収書の適切な保存方法|改正電子帳簿保存法とインボイス制度のポイントについても解説

電子帳簿保存法により、紙とデータ形式のどちらでも領収書を保存できるようになりました。そして、保管作業の効率化や倉庫維持費の削減などを目指し、領収書の原本をデータ形式に移行する企業が増えてきています。
しかし、「電子帳簿保存法に則った領収書の保存方法が分からない」「改正電子帳簿保存法とインボイス制度の関連性が把握できていない」と悩むケースも少なくありません。
そこで本記事では、領収書の保存方法や改正電子帳簿保存法の要件、インボイス制度における領収書の役割についても解説します。

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領収書の保存方法とは

領収書の保存方法とは

電子帳簿保存法が施行されたことで、領収書をデータ形式で保存できるようになりました。電子帳簿保存法における保存方法は、以下の3種類です。

  • 紙のまま保存する
  • 電子領収書をそのまま保存する
  • 紙の領収書をスキャンして保存する

参照:国税庁「電子帳簿保存法が改正されました」

紙のまま保存する

領収書の紙保存は最もスタンダードであり、「紙で授受した領収書」については電子帳簿保存法の改正後もそのまま保存できます。
具体的な保管方法としては、ノートやファイルにまとめるのが一般的であり、後から探しやすいように日付や顧客ごとに分けておくと良いでしょう。文房具メーカーからは領収書保管に特化したファイルが購入できますが、100均で入手できるノートなどでも十分整理できます。
領収書の貼り方でおすすめなのは、テープのりの活用です。必要な箇所にのみ、のりを正確かつスピーディーに塗れるため、領収書の枚数が多いときほど重宝します。
ただし、領収書の劣化が進むと文字がかすれて内容が判別できなくなるため、極力外気に触れさせないなど、保管環境と取り扱いには十分注意しなければなりません。

電子領収書をそのまま保存する

電子的に授受した領収書は、そのままデータ形式で保存できます。しかし、電子帳簿保存法における「真実性」と「可視性」の要件を満たす必要があるため、以下を参考にしてください。

保存要件 内容 優良な電子帳簿*1 その他の電子帳簿*2
真実性の確保 ①訂正・削除履歴の確保 (帳簿) パソコンで作成した帳簿類の訂正・追記などを行った場合、履歴や操作内容を追跡して把握できるようにする
②相互関連性の確保 (帳簿) 帳簿類の電子データと関連データに識別番号・文言などを付与し、関連性が分かるようにする
③関係書類等の備付け

帳簿類の電子データを保存する際、作成に用いるシステムの関係書類を備え付ける

  • 取扱説明書
  • システム概要書 など
可視性の確保 ④見読可能性の確保 帳簿類の電子データを保存する場所に、パソコンと一緒に使用するプリンタなどの機器の取扱い説明書などを備え付け、速やかに出力できるようにする
⑤検索機能の確保 取引年月日・取引金額・取引先といった記録項目で検索できる
日付か金額の範囲指定により検索できる *3
2つ以上の任意項目を組み合わせた条件で検索できる *3

参照:国税庁「優良な電子帳簿の要件」

  • *1 青色申告者が保管する仕訳帳、売掛帳などを、優良な電子帳簿の要件に基づいて保管した際に適用され、申告漏れによる過少申告加算税の5%軽減措置が受けられる
  • *2 発行後に削除履歴などが確認できない書類を指し、税務職員による質問検査権に基づく電子データのダウンロードに応じられるようにしなければならない
  • *3 税務職員による質問検査権に基づく電子データのダウンロードに応じられる場合は不要

また、令和5年度の税制改正により、過少申告加算税の軽減措置の対象となる「優良な電子帳簿」が以下の範囲に限定されることが大綱に記されています。上記の表と合わせて押さえておきましょう。

① 仕訳帳
② 総勘定元帳
③ 次に掲げる事項の記載に係る上記①及び②以外の帳簿

  • a. 手形(融通手形を除く。)上の債権債務に関する事項
  • b. 売掛金(未収加工料その他売掛金と同様の性質を有するものを含む。)
    その他債権に関する事項(当座預金の預入れ及び引出しに関する事項を除く。)
  • c. 買掛金(未払加工料その他買掛金と同様の性質を有するものを含む。)
    その他債務に関する事項
  • d. 有価証券(商品であるものを除く。)に関する事項
  • e. 減価償却資産に関する事項
  • f. 繰延資産に関する事項
  • g. 売上げ(加工その他の役務の給付その他売上げと同様の性質を有するもの等を含む。)
    その他収入に関する事項
  • h. 仕入れその他経費又は費用に関する事項
    (法人税に係る優良な電子帳簿にあっては、賃金、給料手当、法定福利費及び厚生費を除く。)

(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用する。

参照:財務省「令和5年度 税制改正の大綱」六 納税環境整備1(1)81ページ

紙の領収書をスキャンして保存する

電子帳簿保存法における保存区分の1つ「スキャナ保存」の要件を満たせば、紙の領収書を電子化することも可能です。
また、令和5年税制改正の大綱ではいくつかの要件の廃止が発表されており、従来より保存が容易となります。以下表を参考に電子化を進めてみてください。

スキャナ保存要件(「令和5年の税制改正の大綱」の内容反映)

要件 重要書類(注1) 一般書類(注2) 過去分重要書類(注3)
入力期間の制限(書類の受領等後又は業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに入力)
一定水準以上の解像度(200dpi 以上)による読み取り
カラー画像による読み取り(赤・緑・青それぞれ 256階調(約1677万色)以上) ※1
タイムスタンプの付与 〇※2 〇※3 〇※3
解像度及び階調情報の保存 要件の廃止
大きさ情報の保存 要件の廃止
ヴァージョン管理(訂正又は削除の事実及び内容の確認等)
入力者等情報の確認 要件の廃止
スキャン文書と帳簿との相互関連性の保持 対象から除外
見読可能装置(14インチ以上のカラーディスプレイ、4ポイント文字の認識等)の備付け ※1
整然・明瞭出力
電子計算機処理システムの開発関係書類等の備付け
検索機能の確保
その他 ※4、※5

(注1) 決算関係書類以外の国税関係書類(一般書類を除く)をいう。
(注2) 資金や物の流れに直結・連動しない書類として規則第2条第7項に規定する国税庁長官が定めるものをいう。
(注3) スキャナ保存制度により国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該国税関係書類の保存に代えている保存義務者であって、その当該国税関係書類の保存に代える日前に作成又は受領した重要書類をいう。

※1 一般書類の場合、カラー画像ではなくグレースケールでの保存可。
※2 入力事項を規則第2条第6項第1号イ又はロに掲げる方法により当該国税関係書類に係る記録事項を入力したことを確認することができる場合には、その確認をもってタイムスタンプの付与に代えることができる。
※3 入力期間内に当該国税関係書類に係る記録事項を入力したことを確認することができる場合には、タイムスタンプの付与に代えることができる。
※4 過去分重要書類については当該電磁的記録の保存に併せて、当該電磁的記録の作成及び保存に関する事務の手続を明らかにした書類(当該事務の責任者が定められているものに限られます。)の備付けが必要。
※5 過去分重要書類については所轄税務署長等宛に適用届出書の提出が必要。

参照:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】(P15Ⅱ 適用要件 )
参照:財務省「令和5年度 税制改正の大綱(P81(2))

参考までに、電子帳簿保存法ではスキャナ保存して電子化した領収書も法的効力が認められるため、原本を破棄しても問題ありません。

参照:電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】Ⅰ通則【制度の概要等】問3 12ページ

ただし、民事訴訟法において、紙から電子化された領収書は原本とはみなされない可能性があります。安易に原本を破棄すると、民事裁判などで有効な証拠を提示できないリスクがある点に注意しましょう。

領収書の保存期間

領収書の保存期間

紙の領収書を保存する際は、所得税法や法人税法で定められた保存期間にも注意が必要です。
具体的な保存期間は事業形態によって異なるため、詳しく確認していきましょう。

法人の事業者

法人に分類される事業者は、領収書の原本を「該当の事業年度の確定申告提出期限(事業年度終了の翌日から原則2か月)の翌日から7年間*」保存するよう、法人税法で義務付けられています。

*青色申告書を提出した事業年度で欠損金額(青色繰越欠損金)が生じた事業年度または青色申告書を提出しなかった事業年度で災害損失金額が生じた事業年度においては、10年間(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年間)となります。

また、法人税法における領収書の保存期間は「確定申告の提出期限」が起点となりますが、法人は自由に事業年度を定めることが可能です。すなわち、確定申告の期限は企業によって異なります。
自社の確定申告期限を正しく把握し、不備のないように適切な期間保存しておきましょう。

参照:国税庁「帳簿書類等の保存期間」

個人事業主

個人事業主における領収書の保存期間は、所得税法によって定められています。ただし、青色・白色申告のいずれかで具体的な期間が異なるため、それぞれ確認していきます。

青色申告の場合(原則7年)

青色申告の場合、「該当の事業年度の確定申告提出期限の翌日から7年間*1」の保存が義務付けられており、確定申告期限は毎年3月15日*2となります。

*1 前々年分の所得が300万円以下の事業者の場合は5年間
*2 土日祝の場合は、翌日(または翌々日)の月曜日が期限日

参照:国税庁「記帳や帳簿等保存・青色申告」

白色申告の場合(原則5年)

白色申告は「該当の事業年度の確定申告提出期限の翌日から5年間*3」の保存が必要であり、確定申告の期限は青色申告と同様です。

*3 記帳制度適用者(不動産所得や事業所得、山林所得のある方)が記帳制度に基づいて作成した帳簿については7年間

参照:国税庁「白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」

ちなみに、2023年10月から運用されたインボイス制度においては、青色・白色に関わらずすべての領収書を7年間保存しなければなりません。
そのため、基本的に領収書の原本は「7年間保存する」と認識しておけば問題ないでしょう。

参照:国税庁「適格請求書等の写しの保存」問77 1ページ

改正電子帳簿保存法で変更された領収書の要件2つ

改正電子帳簿保存法で変更された領収書の要件2つ

電子帳簿保存法の改正によって、以下2つの要件が変更となっています。

  • タイムスタンプ付与期限の延長
  • 電子領収書を印刷して紙媒体での保存禁止

タイムスタンプ付与期限の延長

改正電子帳簿保存法における1つ目の変更点は、タイムスタンプの付与期限の延長です。
タイムスタンプとは、電子データ上に時刻情報を刻むことを指します。タイムスタンプがあることで、付与された時刻に「電子データが存在していたこと」「データが改ざんされていないこと」の2点が証明できます。
そして、改正前は紙の領収書を電子化する際、3営業日以内のタイムスタンプ付与が義務付けられていました。一方、改正後は最長2ヶ月と7日まで付与期限が延長されています。
詳細な付与期限は、書類の種類によって以下の3種類に分かれています。

入力方式 タイムスタンプの付与期限
業務処理サイクル方式
(重要書類)
社内チェック・承認などが終わり、スキャン可能となるまでにかかる期間(最長2ヶ月)経過後、おおむね7営業日以内に入力
早期入力方式
(重要書類)
書類受領後からおおむね7営業日以内に入力
適時入力方式
(一般書類のみ)
入力期限の定めなし

なお、令和4年1月1日以降に行うスキャナ保存については、データの訂正・削除履歴が残る、または訂正や削除ができないシステムであれば、タイムスタンプの付与が不要になりました。

参照:国税庁「電子帳簿保存法が改正されました」スキャナ保存(区分②)に関する改正事項3ページ

電子領収書を印刷した紙保存の禁止

改正電子帳簿保存法では、PDFなどの電子媒体で授受した領収書を出力し、紙で保存することはできません。
2023年までは電子領収書も紙で保存することができました。しかし、これはあくまで宥恕措置*に過ぎず、2024年1月1日以降、電子取引による領収書は電子媒体のまま保存することが義務化されています。

*電子化に伴う経過措置として許容される措置

参照:財務省「令和5年度 税制改正の大綱」(3)③83ページ

インボイス制度導入における領収書(適格請求書)の書き方

インボイス制度導入における領収書(適格請求書)の書き方

インボイス制度とは、2023年10月1日から導入された消費税の仕入税額控除の新たな方式です。
正式名称は「適格請求書等保存方式」であり、特定の要件を満たしたインボイスを発行・保存し、売手が買手に対して、消費税額や適用される税率を正しく伝えることを目的としています。
そして、インボイス制度では請求書や納品書に加えて領収書にも変更点があります。ここからは、仕入税額控除を受ける上で重要な領収書の書き方や、簡易適格請求書における記載事項についても解説するため、電子帳簿保存法の要件とあわせて把握しておきましょう。

参照:国税庁「インボイス制度の概要」

領収書(適格請求書)の書き方

インボイス制度の導入に伴い、領収書には従来の役割に加えて適格請求書(インボイス)としての役割も追加されました。ただし、そのまま保存しても適格請求書とはみなされないため、以下の事項を必ず記入しましょう。
赤字部分がインボイス制度によって追加された記載事項です。

  1. 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
  2. 取引年月日
  3. 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  4. 税率ごとに区分して合計した対価の額
    (税抜き又は税込み)及び適用税率
  5. 税率ごとに区分した消費税額等
  6. 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

参照:国税庁「適格請求書等保存方式の概要」適格請求書の記載事項・記載の留意点6ページ

適格簡易請求書における領収書の書き方

以下の事業者については、記載事項が簡略化された適格簡易請求書の発行が認められています。

適格簡易請求書の発行が認められている事業者

  • 小売業者
  • 飲食店業者
  • 写真業者
  • 旅行業者
  • タクシー業者
  • 駐車場業者 等

適格簡易請求書において必要な記載事項は以下の通りです。

  1. 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
  2. 取引年月日
  3. 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  4. 税率ごとに区分して合計した対価の額
    (税抜き又は税込み)
  5. 税率ごとに区分した消費税額等または適用税率

参照:国税庁「適格請求書等保存方式の概要」適格請求書の記載事項・記載の留意点6ページ

適格請求書に比べて記載事項が簡略されていますが、仕入税額控除を受けるにあたっては上記を押さえておけば問題ありません。

領収書の保存方法でよくある質問

領収書の保存方法でよくある質問

ここからは、領収書の保存方法に関するよくある質問を解説します。

レシートでも領収書として扱ってもよいですか?

レシートは、領収書と同様に会計書類として扱っても問題ありません。むしろ、レシートは手書きの領収書に比べて改ざんが難しいことから、信憑性のある書類としてみなされています。
ただし、感熱紙の場合は熱や光によって印字内容が消えてしまうリスクがあるため、日の当たらない場所や、温度変化の少ない倉庫で保存しましょう。

領収書を紛失した場合どうすれば良いですか?

領収書をスキャンする前に紛失した場合、速やかに以下の対応を実施しましょう。

  • 発行企業に依頼して領収書を再発行してもらう
  • レシートで代替する
  • クレジットカードなどの利用明細で証明する

ただし、領収書の再発行は発行企業側に義務がないうえ、二重請求のリスクを踏まえて対応を拒否される可能性があります。再発行が難しい場合は日付や金額、内容、支払先が分かるレシートなどを領収書の代わりとしてスキャナ保存しましょう。

不要になった領収書はどう処分すればいい?

保存期間が終了した紙の領収書は、社外に流出しないよう速やかにシュレッダーにかけましょう。
また、領収書が多く手作業による破棄に時間がかかる場合は、文書溶解サービスなどを提供している専門業者も検討してみてください。

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まとめ

本記事では、電子帳簿保存法における領収書の保存方法や、インボイス制度に則った記載事項についても解説してきました。
領収書は重要な会計書類であり、電子帳簿保存法だけでなく、法人税法といった他の法律で規定された保存期間などに関しても注意しなければなりません。
また、インボイス制度の要件も満たすことで、仕入税額控除が受けられます。本記事を参考に、法律に則った形で領収書を保存しましょう。