FEATURE特集記事

データ化業務/ スキャニング/ 2023.07.21 2024.04.16

スキャナ保存の要件や対象書類とは?タイムスタンプの必要性とメリット・デメリットも解説

スキャナ保存は、ペーパーレス化を推進するための有効な手段のひとつです。電子帳簿保存法における保存区分でもあり、業務効率化を図るうえでも効果があります。
一方、「法改正が多くて保存方法がよくわからない」「スキャナ保存を導入するメリットはなにか」といった、疑問を抱える担当者も多いでしょう。
この記事では、スキャナ保存の要件や対象書類、タイムスタンプの必要性などを解説します。
重要書類を適切にスキャナ保存したい企業担当者様は、ぜひ参考にしてください。

スキャニングサービス ダウンロード資料


スキャナ保存とは?制度概要や要件を解説

スキャナ保存

スキャナ保存とは、紙でやりとりした契約書などを画像データとして保存する方式を指します。
電子帳簿保存法の要件を満たさなければならないため、ここではまず、スキャナ保存の詳しい要件やスキャナ保存以外の保存区分についても解説していきます。

電子帳簿保存法の概要

電子帳簿保存法とは、請求書や領収書などの書類・帳簿について、従来の紙保存だけでなく「データ形式での保存」も可能とする法律です。
具体的には、パソコンで作成した書類や帳簿を保存する「電子帳簿等保存」、スマホ撮影やスキャナで取りこんだデータを保存する「スキャナ保存」、データでやりとりした契約書などを保存する「電子取引データ保存」の3つについて規定しています。
データ形式で保存できるようになったことで、企業は従来より積極的にデジタル化を進められるようになりました。

参照:「国税庁HP(制度概要)」

スキャナ保存の要件

2022年1月1日に電子帳簿保存法が改正されて以降、以下の要件に基づけば紙で受領・作成した書類や帳簿をスキャナ保存できるようになりました。スキャニングの機材がなくても、スマホで撮影して画像データで保存することも可能です。

要件 重要書類 一般書類
入力期間
(入力方式は後ほど紹介)
業務処理サイクル方式
早期入力方式
適時入力方式
画像の解像度 200dpi以上
カラー画像での
読み取り
カラー画像…赤色、緑色、青色の階調が各256階調以上(24ビットカラー) 白黒階調(グレースケール)でも可
タイムスタンプの付与 1つの書類単位で、入力期間内にタイムスタンプを付与
(修正履歴が残るシステムであれば不要)
1つの書類単位で、適時タイムスタンプを付与
(修正履歴が残るシステムであれば不要)
読取情報の保存
(2024年1月1日以後の保存分は不要)
読み取り時の解像度、階調、書類の大きさに関する情報を保存
(受領者本人が読み取る場合、A4以下のサイズは大きさ情報不要)
読み取り時の解像度、階調の情報を保存
バージョンの管理 書類データの訂正、削除をした場合に、その事実と内容が確認できるシステムを使用。または、訂正・削除ができないシステムを使用
入力者等の情報
(2024年1月1日以後の保存分は不要)
書類データを入力した人、またはその者を監督する者の情報が確認できる
帳簿との
相互関連性の確保
(2024年1月1日以後の保存分は重要書類のみ)
書類データと対応する帳簿との関連性が確認できる
見読可能装置 (1)カラーディスプレイ(14インチ以上)及びカラープリンター並びに操作説明書を備え付ける

(2)次の要件を満たす

  • 整然
  • 明瞭
  • 拡大・縮小が可能
  • 4ポイントの大きさの文字を解読可能
白黒階調(グレースケール)によるデータ保存の場合は、ディスプレイとプリンタはカラー対応でなくともよい
システム概要書類 スキャナ保存に対応したシステムの概要書や操作説明書などを備え付ける
検索機能

次の要件を満たす

  • 取引年月日、その他の日付、取引金額、取引先で検索
  • 日付、金額の範囲指定による検索
  • 以上の項目を2つ以上組み合わせて検索

(注)税務職員の質問検査権に基づいた電子データダウンロードの求めに応じる場合は、「取引等の年月日」「取引金額」「取引先」の3点の項目のみで良い

(参照:国税庁の一問一答「問12」

ただし、電子帳簿保存法においてスキャナ保存は義務ではありません。あくまでも「データ保存をしてもよい」という主旨の法律となるため、紙のままでも保存できる点を把握しておきましょう。

スキャナ保存以外の保存区分2つ

スキャナ保存以外にも、以下2つの保存区分が定められています。

  • 電子帳簿等保存:パソコンなど電子的に作成した書類や帳簿をデータで保存
  • 電子取引データ保存:電子的にやり取りした情報をデータで保存

上記のうち「電子取引データ保存」は義務とされています。ただし、2023年12月31日までに行う電子取引に関しては、税務署の求めに応じて提示・提出できれば紙保存でも問題ありません。

【2023年最新】スキャナ保存要件の改正ポイント

【2023年最新】スキャナ保存要件の改正ポイント

電子帳簿保存法の改正により、より効率的で柔軟なデータ管理が可能になりました。
ここでは、より理解を深めるために、2022年1月1日以降適用となったスキャナ保存要件の具体的な改正ポイントを解説します。

1. 要件を満たせばタイムスタンプ不要

従来のスキャナ保存はタイムスタンプの付与が必要でした。しかし、2022年1月1日の改正以降、書類の修正履歴などが残るシステムを導入すれば、タイムスタンプは不要とされています。
その背景としては、そもそもタイムスタンプの目的が取引情報の改ざん防止だったところ、修正履歴が残るシステムが主流化し、容易に代替できるようになったことが挙げられるでしょう。
一方、要件に適合するシステムを導入していない場合は、依然としてタイムスタンプを付与しなければならない点に注意してください。

2. タイムスタンプ入力期間の緩和

スキャナ保存要件の改正により、タイムスタンプの入力期間も緩和されています。
電子帳簿保存法の改正以前は、領収書などを受領してから数日程度でタイムスタンプを付与しなければならず、事務的な負担がありました。しかし、法改正によって最長2ヶ月と7営業日以内まで延長され、作業者の負荷が緩和されています。
参考までに、スキャナ保存における「入力」とは、紙をデータ保存した後、タイムスタンプを付与し、訂正や削除の履歴が残るような仕様とするまでの一連の作業を指します。
このタイムスタンプの入力方式は次の3種類となっており、方式によって期限が異なります。

  • 業務処理サイクル方式:社内チェックや承認が終わり、スキャン可能となるまでにかかる期間(最長2ヶ月)経過後おおむね7営業日以内に入力する方式
  • 早期入力方式:書類受領後、おおむね7営業日以内に入力する方式
  • 適時入力方式(一般書類のみ):期限なく入力できる方式

重要書類は先ほど触れた最長2ヶ月+おおむね7営業日以内の入力期間が適用されますが、一般書類に期限の定めはありません。
また、重要書類はさらに2つに分かれています。本来早期入力が望ましいのですが、企業には経費精算など一ヶ月分を次月の何日までに申請し、受理するといった業務処理のサイクルがあります。こういった場合は、業務処理サイクル方式となり、期限が長めに設定されています。

参照:国税庁「パンフレット:はじめませんか、書類のスキャナ保存」
参照:国税庁「国税庁一問一答の問22、23」

3. 検索要件は3つのみ

従来の電子帳簿保存法では日付や金額の範囲指定で検索できる仕組みの構築が必須でした。しかし、法改正によって必要な検索項目が減り、現在は以下3点を満たせば問題ないとされています。

  • 取引等の年月日
  • 取引金額
  • 取引先

ただし、税務職員の質問検査権に基づいた電子データダウンロードの求めに応じることが前提条件となるため、いつでも対応できるようにしておきましょう。

4. 国税関係書類の自著が不要

電子帳簿保存法では、領収書の使い回しなどの不正を防止するために、国税関係書類の自署が必要でした。
しかし、法改正により自著が不要となったため、タイムスタンプの入力期間緩和と相まって、事務的な負担が軽減されています。

5. 適正事務処理要件の廃止

適正事務処理要件とは、国税関係書類の受領・入力といった事務処理に関して定められたルールであり、電子帳簿保存法の改正によってこれまで必須だった次の3点が不要となっています。

  • 相互けんせい
  • 定期的な検査
  • 再発防止

具体的には、受領者以外による原本と画像データの突き合わせ確認(相互けんせい)や、定期的な事務処理手続きの検査体制、そして事務処理に不備があった際の再発防止対策の策定も必要なくなりました。

スキャナ保存の対象書類

スキャナ保存の対象書類

スキャナ保存の対象書類は、大きく分けて「重要書類」「一般書類」の2種類に分けられます。
両者の違いとして、資金や物の流れに直接関係し連動する書類を「重要書類」とし、その他の国税に関連しない書類を「一般書類」と区別しています。
具体的な書類は以下の通りとなるため、不備のないようにあらかじめ把握しておいた方が良いでしょう。

重要書類:契約書、納品書、請求書、領収書
一般書類:見積書、注文書、検収書

(参考:スキャナ保存関係パンフレット(国税庁))

2024年1月1日以降適用されたスキャナ保存に関する改正事項

2024年1月1日以降適用されたスキャナ保存に関する改正事項

ここまではスキャナ保存に適用される要件などを解説してきましたが、電子帳簿保存法は2024年1月1日をもってさらに改正されています。
事務処理の負担がさらに軽減されているので、ぜひ参考にしてください。

(参考:電子帳簿保存法の内容が改正されました~令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要~(令和5年4月)(PDF/521KB)

1. 解像度・階調・大きさに関する情報保存が不要

2024年1月1日以降は、これまで必要だった「解像度」「階調」「大きさ情報」の保存が不要となりました。
ただし、スキャナ読み取り時の「解像度は200dpi以上」「階調は原則カラー」のルールは引き続き満たさなければなりません。

2. 入力者情報の保存が不要

これまではスキャナ保存をする者(入力者)または、監督者の情報保存が必要でしたが、2024年1月の電子帳簿保存法の改正以降は不要となったため、事務処理の工程が一つ減ったことになります。

3. 一般書類の帳簿との相互関連性確保が不要

改正前の法律では、すべての国税関連書類において書類と帳簿との相互関連性を確保しなければなりませんでした。
対して、2024年1月1日以降は「資金や物の流れに直結・連動する書類(重要書類)」のみ相互関連性を確保すれば足ります。そのため、注文書といった一般書類を処理する工程が短縮されるでしょう。

スキャナ保存のメリット

スキャナ保存のメリット

スキャナ保存のメリットは主に次の3つが挙げられます。

  • 業務効率の向上
  • 管理コストの削減
  • 紛失リスクの低下

次からひとつずつ詳しく見ていきましょう。

業務効率の向上

紙のまま保存している場合、確認事項が発生した際は保管場所まで実際に出向き、人の手で探しだす必要がありました。しかし、スキャナ保存に切り替えれば、デスクから一歩も動かずにパソコン検索のみで見つけ出せるようになります。
さらに、電子化によって書類の郵送作業もなくなるため、業務効率が飛躍的に高まるでしょう。

管理コストの削減

紙で保存する際は、保存期間が終了するまで倉庫などの保管場所を維持・管理しなければなりません。
一方、スキャナ保存でデータ化すれば、クラウドなどにデータを移せるため、倉庫の賃料と管理コストの削減につながります。

紛失リスクの低下

どれだけ厳重な保管体制を構築しても、紙のまま保管している限り、紛失リスクは避けられません。
ファイリングのために持ち出すタイミングや、クライアントへ提示する際など、リスクに晒される機会はいくらでも存在します。盗難によって外部へ情報漏洩する可能性もあることから、セキュリティの面でもスキャナ保存は有用といえるでしょう。
ただし、外付けハードディスクなどに保存する場合は、デバイス自体の紛失に注意する必要があります。

スキャナ保存のデメリット

スキャナ保存のデメリット

スキャナ保存のデメリットは主に次の3つが挙げられます。

  • システム導入コストがかかる
  • 法律への対応
  • 高度なセキュリティ対策が必要

ここからは、ひとつずつ詳しく見ていきましょう。

システムの導入コストがかかる

スキャナ保存での電子化を進める際、新たにクラウドシステムの導入を検討する企業も少なくありません。しかし、基本的にシステム導入にはコストがかかり、稼働後もランニングコストが発生するケースがあります。
加えて、現在は電子帳簿保存法に適合したシステムが多数存在することから、自社の予算やニーズに合ったシステムを選ぶ手間と時間がかかる点にも注意が必要です。

法律に対応する必要がある

電子帳簿保存法をはじめとする法律は内容が複雑な上に、不定期で改正されることもあります。
当然、その都度対応しなければならず、改正の内容によっては抜本的な体制変更などが必要となり、コストと手間がかかってしまうでしょう。最悪の場合、知らぬ間に法律に反してしまうリスクもあるため、こまめな情報収集も心がけなければなりません。

高度なセキュリティ対策が必要

クラウド上でデータを保存する場合、国税に関連する重要書類などをオンライン上に構築することになります。したがって、ハッキングやマルウェアの対策は必要不可欠。
様々なサイバー犯罪に対応できるよう、セキュリティソフトの導入やデータの暗号化、定期的なバックアップなどが求められます。

スキャナ保存は業務効率化や書類の管理コスト削減が期待できる一方、国税関連書類や機密情報を電子化するため、高度なセキュリティ対策が必要です。
また、法改正も頻繁に行われ、その都度で新たな電子帳簿保存法の要件にも対応しなければなりません。

専門知識を持つスタッフが在籍していない場合、適切な保管体制やセキュリティ対策を構築できない可能性もあることから、少しでも不安を感じるなら、スキャナ保存の代行業者を利用するのがおすすめです。

シティコンピュータは、データ化業務やスキャンの代行業者として30年以上の実績を持ち、高度なセキュリティ対策と電子帳簿保存法の要件にも対応しています。

  • 30年以上の実績
  • 社外秘書類もクライアントのオフィスでスキャン可能
  • 運搬から廃棄まで高水準のセキュリティ対策を実施
  • 原本の処理やOCR処理もワンストップで完結

文書管理の負担を軽減し、安全かつ効率的なスキャナ保存を実現するために、ぜひシティコンピュータの代行サービスをご検討ください。

まとめ

本記事では、スキャナ保存の方法や具体的な改正内容を解説してきました。
紙の書類をスキャナ保存するには、不定期で改正される法律への対応やセキュリティ対策などの課題もあります。一方、業務効率化に加えて書類紛失リスクの軽減など、大きなメリットも期待できるため、代行業者などを活用して適切な体制を構築していきましょう。