データ化業務/ スキャニング/ 2024.06.11 2024.06.11
ペーパーレス化は意味ない?具体的な効果やメリット・デメリットを解説
紙媒体をデータに置き換えるペーパーレス化。電子帳簿保存法への対応や業務の効率化、コスト削減などを目的として多くの企業で実践されています。
一方で、「ペーパーレス化は意味ない」という主張も散見されます。ペーパーレス化を検討するにあたって、本当に意味がないのか、結局のところ導入すべきかどうか判断しかねている担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、ペーパーレス化の概要や「意味ない」と言われる具体的な理由を解説します。ペーパーレス化のメリットや実現する際の注意点などもまとめているので、ペーパーレス化の導入に迷っている方はぜひ参考にしてください。
ペーパーレス化とは?
ペーパーレス化とは、紙の文書や資料などを電子化・データ化することによって紙の使用を減らすことです。
昨今は電子帳簿保存法が改正されたことに加え、ペーパーレス化による業務上の恩恵が大きいこと、リモートワークによるペーパーレス化の需要や必要性が高まったことなどが重なり、導入・推進する企業が増加しています。
電子化・デジタル化との違い
ペーパーレス化と混同されやすい言葉に「電子化」と「デジタル化」がありますが、以下のようにそれぞれ意味合いが異なります。
- 電子化:紙媒体を電子媒体に変換すること、またはその手段
- デジタル化:アナログなプロセスをシステム・デジタルに置き換えること
つまり、ペーパーレス化は紙を削減する方針や活動全体を指す言葉であり、電子化やデジタル化はそれを実現するための手段といえます。
なぜ?「ペーパーレス化は意味ない」と言われる6つの理由
ペーパーレス化が導入される一方で、「ペーパーレスは意味ない」という意見も散見されます。ここでは、「意味ない」と言われる以下6つの理由を解説します。
- ITリテラシーが不足している
- 導入コストの折り合いがつかない
- 費用対効果が見えづらい
- セキュリティ・情報消失リスクが残る
- 資料やデータの視認性が低下する
- 従来の方法を好んでいる人が多い
ITリテラシーが不足している
従業員や経営層がペーパーレス化の詳しい内容や有用性を理解できずに、「よくわからない」「難しそう」というイメージが先行した結果、「意味ない」という言葉で片付けてしまっている場合があります。
ひとくちにペーパーレス化といっても、実現するためには、たとえば以下のようなさまざまなシステムやツールに対する理解(ITリテラシー)が求められます。
- OCR:手書きや印刷された文字をカメラなどで認識してデータ化する技術
- 文書管理システム:書類を電子化して作成から廃棄までを一元管理するシステム
- オンラインストレージ:インターネット上にデータを保管・共有するスペース
導入コストの折り合いがつかない
ペーパーレス化の有用性は理解しつつも、必要なシステムやツールの導入コストに折り合いがつかず、「意味ない」と敬遠しているケースもあります。
たとえば、OCRを活用する場合は、初期費用が10〜20万円、月額費用は1〜3万円程度が相場といわれています。
これらの費用は直接的な売上や利益に影響せず、高いか安いかは予算感などによっても変わります。そのため、コスト意識の高さ、費用に見合う効果や価値を見出だせるかどうかなどによって意見が分かれるところでしょう。
費用対効果が見えづらい
ペーパーレス化の費用対効果には、見えやすいものと見えづらいものがあることも「意味ない」といわれる理由のひとつです。
たとえば、コピー用紙やインク代などは削減効果がわかりやすい一方で、印刷の手間や探す手間、すなわち「その作業にかかっている人件費」を正確に把握するのは難しいといわざるを得ません。より正確な費用対効果を測るには知識が必要といえるでしょう。
一見してわかりやすい物理的な削減効果だけでは、システムやツールの導入費用やランニングコストに見合わないと思われる可能性があります。
セキュリティ・情報消失リスクが残る
ペーパーレス化をすることで、「書類を外出先に置き忘れてしまった」「資料を紛失した」などの情報漏洩や消失リスクを減らせる側面があります。
しかしその一方で、システムダウンやサイバー攻撃など、紙媒体とは異なるリスクを考慮しなければなりません。
特に、セキュリティの強化や情報の保全を目的にペーパーレス化を推進しようとした場合、セキュリティ面や情報消失リスクが残ることを指して「意味ない」と言われる可能性があります。
資料やデータの視認性が低下する
紙媒体に比べて資料やデータの視認性が低下しやすいことも、「ペーパーレスは意味ない」と言われる理由になっています。
たとえば、紙は最初から記載内容の全体像が見えており、複数の資料を並べて見比べることもできます。しかし、電子化された資料をデバイスで閲覧する場合、どうしても見切れてしまったり、文字が小さくなってみえづらくなったりします。複数ページを比較しようにも、画面内に並べて表示することもできません。
このようなケースでは「ペーパーレス化したことで利便性や効率が低下した」と感じやすく、「ペーパーレス化は意味ない」と言われる要因にもなり得るでしょう。
従来の方法を好んでいる人が多い
従来の方法を好む人がペーパーレス化を阻むために「意味ない」と声を上げているケースもあります。
これはペーパーレス化に限った話ではありませんが、オペレーションの変更などには多大な手間や労力がかかります。また、少なからずデメリットも生じることから、従来のやり方を変えたくないという人は一定数存在します。
ペーパーレス化も例外ではなく、メリット・デメリットのどちらも存在し、紙ベースのほうが優れている点があるのも事実です。
ペーパーレス化をスムーズに導入するためには、従来の方法をどの程度踏襲できるか、どう便利になるかをよく理解してもらう必要があるでしょう。
ペーパーレス化のメリット
ペーパーレス化の主なメリットは以下の6つです。
- 業務効率化が期待できる
- コストダウンを実現できる
- 情報セキュリティの強化につながる
- 情報の保管・管理・バックアップがしやすくなる
- 電子帳簿保存法に対応できる
- 企業イメージの向上につながる
業務効率化が期待できる
ペーパーレス化に成功すると、さまざまなシーンで業務の大幅な効率化が図れる可能性があります。具体的には以下のようなものが挙げられます。
- 保管性の向上:書類を保管していたスペースが空く
- 共有性の向上:複数人での情報共有・送信が容易かつスピーディーになる
- 検索性の向上:検索機能により欲しい情報に即座にアクセスできる
- 閲覧性の向上:さまざまなメディア・デバイスでどこからでも閲覧できる
- 処理性の向上:文字を機械的に認識し、処理や分別ができる
一例として、データ化した書類を処分することでスペースが空き、新たにミーティングスペースに活用するといったことも可能になります。
加えて、物理的なコストが削減されるだけでなく、作業に要していた手間や時間も大幅に削減されることになり、実質的な人件費の削減にもつながるでしょう。
実施内容にもよりますが、ペーパーレス化には一言では語り尽くせない業務効率効果が期待できます。
コストダウンを実現できる
ペーパーレス化を導入することで、さまざまなコストダウンも実現できます。
たとえば、印刷にかかっていた用紙代・インク代などの印刷コスト、プリンター・コピー機にかかっていた維持費・メンテナンス費用、資料の保管や管理に使っていたファイル代・封筒代・郵送費などが挙げられます。
また、これらの業務にかかっていた手間や時間が削減されることで、残業代などの人件費を削減できるケースもあります。浮いた時間をより重要なコア業務に充てることで、生産性の向上を図ることもできるでしょう。
情報セキュリティの強化につながる
ペーパーレス化を導入することは、情報セキュリティの強化にもつながります。紙媒体にありがちな資料の紛失や盗難などがなくなるためです。
電子化した文書や資料であれば、システム上で任意の人だけが閲覧できるよう制限をかけられるという点でも、情報セキュリティの向上が見込めます。
ペーパーレス化に用いられるツールやシステムには強固なセキュリティ対策が施されているため、紙ベースの管理よりも情報漏洩リスクは低いと言われています。
情報の保管・管理・バックアップがしやすくなる
電子化された文書や資料は、保管・管理・バックアップしやすいのも特徴です。
たとえば、紙の資料を電子化すれば保管に要していたファイル・キャビネット・それを置いていたスペースなどが不要になります。
資料を探す場合、保管場所までの移動や、棚・ファイルを目視する動作が不要になり、検索機能を使って瞬時に必要な資料を発見できます。不要になったデータの抽出や破棄も容易になるため、管理のしやすさが劇的に向上するでしょう。
また、紙媒体の場合は汚損・破損・火災などの外的要因によって情報が失われるリスクがあり、程度によっては復元が不可能になるケースも少なくありません。
一方、データはクラウド上に保存する、複数箇所に保存しておくなどの工夫をすれば消失リスクは最小限にできるうえ、複製やバックアップも一瞬で完了します。
電子帳簿保存法に対応できる
ペーパーレス化は、電子帳簿保存法に対応するうえでも有効です。
電子帳簿保存法とは、税務関係の帳簿や書類を電子データで保存することを認めた法律で、「電帳法」とも呼ばれています。2022年1月に改正され、2024年1月1日以降は電子取引のデータはデータのままで、原則7年間保存することが義務付けられました。
社内でペーパーレス化を推進していれば、電子帳簿保存法の大まかな要件は自然とカバーできたことになるのです。
電子帳簿保存法の要件について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
企業イメージの向上につながる
ペーパーレス化は、自社の企業イメージの向上にもつながります。ペーパーレス化を通じて環境への配慮やエコ、働き方の多様性などをアピールできるためです。
特に、SDGsがトレンドの昨今においては、ペーパーレス化に取り組む意味はことのほか大きいといえるでしょう。
業務で扱う情報・書類を電子化することは、対外的なイメージアップだけではなく、リモートワークなどの多様な働き方にも対応しやすくなる側面があります。働きやすさが向上することで既存社員の定着率が向上するほか、人材採用のシーンにおいても、求職者からも価値を感じてもらいやすくなる可能性があります。
ペーパーレス化を実現する際のポイント
ペーパーレス化を実現する際に意識すると良いポイントは以下の6つです。
- 全社的に十分に理解を得る
- 使いやすさを重視する
- 小さく始めて段階的に広げる
- 導入効果をモニタリングして共有する
- 定期的に見直しを行う
- 代行サービスを活用する
全社的に十分に理解を得る
ペーパーレス化を実現するためには、部署・役職を問わず、全社的に十分理解を得ることが必要不可欠です。
チーム単位で協力を要請したり、費用を捻出したりするためには、管理職や経営陣からの理解と協力が必要です。また、ペーパーレス化とひとくちにいっても、立場に応じてさまざまな取り組みや業務フローの変更を行う必要があるため、社員ひとりひとりの協力が欠かせません。
ペーパーレス化をスムーズに浸透させるためには、実施する意義・目的・導入するメリットなどを全社的にしっかり伝えることが大切です。ただし、経営陣・管理職・個人レベルなど、立場によってメリットを感じるポイントが異なるため、それぞれの目線に合わせて丁寧に説明しましょう。
使いやすさを重視する
ペーパーレス化をスムーズに進めるためには、使いやすさにも重点を置きましょう。使いづらいと使用者にストレスがかかり、ネガティブな反応や反対意見が出たり、協力を得にくくなったりするためです。
たとえば、社内で日常的に使用されているデバイスで資料の閲覧や編集を可能にしたり、視認性を高めるためにタブレットや大きめのモニターを用意するなどが考えられます。
また、デジタルツールに不慣れな人、苦手意識がある人でも問題なく操作・閲覧できるかどうかをシステムやツールの選定基準にするのもひとつの方法です。
会社によって従業員のITリテラシーや使用しているデバイスが異なるため、なるべく自社の環境と親和性の高い方法を採用すると良いでしょう。
小さく始めて段階的に広げる
ペーパーレス化にともなう実施内容や変更が大掛かりになる場合は、まずは小さく始めることを意識しましょう。一気に変えてしまうと、変化に対応しきれない人や部署が続出し、通常業務に支障をきたしてしまう可能性があるためです。
まずは優先順位の高い特定の部署やプロジェクトから導入し、トラブルや問題が発生しないかどうかを観察しながら慎重に進めることが大切です。
ある程度見通しが立ったところで段階的に広げていけば、導入・定着まで無理なくスムーズに進める可能性が高まります。
導入効果をモニタリングして共有する
実際に運用を始めたら、導入効果をモニタリングしつつ、全社に共有する仕組みを作りましょう。目に見える効果を提示することで、ペーパーレス化に対する理解と浸透が加速するためです。
たとえば、社内報や社内SNSで特集を組んだり、事例をシェアすることで何かしらの特典を付けたりするのも良いでしょう。コストの削減などを目的としている場合は、数的目標やKPIを設定して、経過を公表するのもひとつの方法です。
ペーパーレス化の有用性やメリットが具体的にイメージできれば、積極的に取り組もうとする人が増えるはずです。
定期的に見直しを行う
システムやツールを導入し、施策が一段落した後も、継続的に効果検証を続けて見直しを行うことが大切です。ペーパーレス化に限った話ではありませんが、すべてが導入前の計画通りに進むケースは稀であり、多くの場合ブラッシュアップが必要なためです。
運用するなかでより良い活用方法や追加すべき機能、削減すべき無駄な工数などが見つかるケースも少なくありません。導入して終わりではなく、PDCAを回しながらより良い状態を目指すことで、徐々に自社に最適な仕組みができあがっていくでしょう。
代行サービスを活用する
スムーズにペーパーレス化を実施するためには、部分的に代行サービスを活用するのもひとつの方法です。
これから実行される業務やそこで作られる資料は、業務フローを変更することでペーパーレス化できますが、既存のデータや資料をデータ化するには膨大な手間と時間がかかります。既存の書類や資料のペーパーレス化がうまく進まず、結果的にペーパーレス化が頓挫するケースも珍しくありません。
専門の代行サービスを活用すれば過去のデータや資料はそちらに任せて、自社のリソースは通常業務やよりコアな業務に集中できるため、移行がスムーズになる可能性があります。
まとめ
さまざまな恩恵があることから導入する企業が増加しているペーパーレス化。「意味ない」という声も聞かれますが、本当に意味がないのではなく、何らかの弊害があってそのように揶揄されるケースが多いというのが実際のところです。
一方で、既存の書類をペーパーレス化する作業がスムーズに進まず、ペーパーレス化の弊害になっているのも事実です。以下のような場合は、専門のスキャニングサービスの活用がおすすめです。
- 電子化する書類が膨大
- 電子化作業を行う人的リソース・余裕がない
- 保存義務に関する知識がなく不安
- 電子化すべきか否か、保存すべきか否かの判断が困難
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